短小男の性戯に狂う人妻。其の三
◇これが我がムスコです◇

私には返す言葉が見当たりませんでした。
短小・・・大江さんは、男としては致命的とも言える欠点を持っていたのです。
「そんなカラダが恥ずかしくて、いままで素人の女性とは寝たことがないんです。
 とは言ってももちろん僕も男だから、欲求もありますよ。
 どうしょうも無くなった時は、自分でやるか、ソープランドへ行くんです」

やる瀬無い表情で、吐き捨てるように大江さんは続けました。
「ソープなら商売だから、どうってことない。僕は金を払ってるんだ・・・
 そうやって虚勢を張っていても、やっぱり惨めに成るんです。
 どうしょうもないコンプレックスなんですよ、短小ってのは。
 ソープの女もね、僕のペニスを見ると軽蔑した顔をする。
 実際そんな時はやり切れなくなるんですよ」

大江さんのピッチが早まりました。一方、私はグラスを持つ手も止まりがちでした。
「どうしたんですか・・・何か言って下さいよ、智子さん」
「私・・・何て言っていいのか、でも・・・」
大江が短小だからと言って、決して私は落胆しませんでした。
また、そんな筋合いでもないでしょう。

「人間って、誰も欠点を持ってるものじゃないかしら。
 努力ではどうしょうもない欠点って、確かにあるわよね。
 それなら、長所で欠点をカバーすればいいんじゃないですか?」
「ふふ、優等生的な答えだな。それじゃあ智子さん、
 僕が長所で欠点を補うと言ったら、一緒にホテルへ行ってくれますか?」
「・・・」

私は返事に詰まりましたが、もう驚きはしませんでした。
「あなたの方こそ、このオバアチャンをからかうつもり・・・」
「そのつもりだったら、こんな話はしませんよ。
 僕は智子さんに望みを賭けていたんです」

私達はスナックを出て大岡川沿いを暫く歩いて、
最近改装工事の終わったばかりのシティーホテルへと足を踏み入れました。

それは生まれて初めての背徳行為でした。不倫とは、其れまでの私にとって、
マスコミによって一方的に垂れ流される情報でしかなかったのです。

ある種の使命感と好奇心で、私の胸は一杯でした。
ホテルに入る時の私はもう、人の妻でも子の母親でもなくなっていました。
私はただのおんな。本能の赴くままに行動する一匹の牝でしかなかったのです。

二人は別々にシャワーを浴びて、いざベッドインとなると、
私は堪らない羞恥と後悔の念に苛まれていました。
これほど年の違う若い男に、思秋期を過ぎた裸体を見せなければ成らない気恥ずかしさ。
そして、これと言った不満もない夫を裏切る事への後ろめたさ・・・。

しかし羞恥の点では、大江にも私に劣らないものがあったと察します。
何しろ大江は、誰にも漏らす事の出来なかった秘密を暴露しようとしていたのですから。
「笑わないで下さいよ。僕のペニスを見て逃げ出さないで下さい」
「そんなこと・・・。私、あなたの力に成りたいと思ってるんです」

大江の他に、誰がこの私を必要として呉れているでしょうか。
何が何でも、大江を満足させてやりたい・・・。
私の使命感は、まさに頂点に達しようとしていました。

「これが、そのペニスです。これでも、僕と寝て呉れますか?」
ベッドに仰向けに寝て、大江はトランクスを脱ぎました。恐る恐る其処を覗き込むと、
ありました、子供のものと言ってもおかしくない本当に小さな肉の棒が・・・。
私は夫以外のペニスは息子達が小さな頃に一緒にお風呂に入って見た以外、
知らないのですが、婦人雑誌等で読む限り夫のペニスは日本人の標準の様で、
安心していたのですが・・・

「小さいでしょう?ガッカリしましたか?」
「そうね、夫との比べても小さいわね。でも、たいした問題じゃないわ。
 女にとって大切なのは、大きさじゃないの。男性は巨根願望があるらしいけど、
 女にとって大きさなんて関係ないのよ、余り早すぎるのも困るけどね」

子供の頃の息子たちのペニスを思い出し、心の底から、愛おしさがこみ上げてきました。
容姿、人柄共に申し分のない大江なのに、こんな欠点を悶々と悩んで居たなんて。
その為に、女性との正常な関係を持ってないなんて、
男としてこれ以上の悲劇が有るでしょうか。

「気にしないで、楽しむ事だけをかんがえましょう。私も出来るだけ、
 あなたを楽しませるように努力するから、あなたも私を歓ばせて。
 とにかく、楽しい夜にしましょう」
私は聖母マリアのような心境で、スリップとショーツを脱ぎ捨てました。
inserted by FC2 system