幻想夫婦交歓記。其の六
◇もう、もうダメよ私!

「ジッとして、瑛子さん。ほーら、如何ですか?悪くはないでしょう?」
知英さんの“触診”に、私は翻弄されていました。彼の指に導かれ、
私は嫌が応にも反応せずには居られませんでした。
本来の目的を忘れ、私は惑乱していました。

「あの写真、見せて頂きましたよ。
 あれ以来、貴女の裸が目に焼きついて離れませんでした」
知英さんの言葉に、私はハッとしました。
彼は、私がここに来た本当の目的をとっくに見抜いていたようです。

「ああっ、は、恥ずかしいわ。あれは・・・」
「判ってますよ。どうせ、ウチの家内にそそのかされて撮ったものでしょう?
 まったく、家内にも困ったもんです。悪戯の度が過ぎる。でも・・・」
と、いよいよ知英さんの指は淫らに動き始めます。

「今日、こうやって来て下さって光栄です。
 あの写真以上に、貴女の肉体は色っぽい」
「ああ、ど、どうしましょう、私・・・」思わず、私は顔を覆っていました。
どうしょうもないほど、私の下腹は濡れそぼっていたのです。

「恥ずかしがらないで下さい。あなたは、敏感な肉体の持ち主なんだ」
いいえ、そうではありません。敏感などではなく、私は自分の大胆さに、
そして不倫への期待感に猛烈に催していただけなのです。

「貴女が来て下さらなければ、きっと僕の方からお誘いするような事に
 成って居たに違いありません。ああ、瑛子さん!」
言い終わりざま、知英さんは濡れ滴るところへ口唇を押し付けて来ました。
瞬間、私は雷に打たれたようになり、激しく腰を震わせていました。

「あぅっ・・・いいっ・・・」
文句なしの快感でした。知英さんに吸われると、
私は羞恥も見栄もかなぐり捨てていました。嵐のように欲情が吹きすさび、
私を淫婦へと変身させたのです。

舌と指を上手に使い分けて、知英さんは忽ち私を歓喜の極みへと押し上げました。
私には、もう美紗子さんに対する遠慮などは一欠けらもありませんでした。
しかし、知英さんが彼女の夫であるということだけは、決して頭から離れませんでした。

そのことが、いよいよ私を煽り立ててくれたのは言うまでもありません。
彼が美紗子さんの夫であるという事実は、
私にとってどんなものにも勝るスパイスだったのです。

「いいわ、ああ、いいわ・・・蕩けてしまいそうよ・・・」
美紗子さんとの愛戯も衝撃的でしたが、やはり私には男性の方が性に合って
いるようです。私は美紗子さんとの時より、はるかに深い愉悦に溺れていました。

「僕も、もう我慢できないよ。いいですね、瑛子さん」
白衣を脱ぎ捨てて、知英さんがズボンを下ろしました。
良いも悪いもありませんでした。知英さんの股間を目の当たりにして、
早くも私は絶頂の予感さえ抱いていたのです。

「ええ、ええ!早く、早く来て!」
その瞬間が、待ち遠しくて堪りませんでした。
彼の股間があてがわれると、私は自ら腰をせり上げていました。

「あっ、ああーっ、知英さんっ・・・」
私は彼にしがみついて、リズムを刻んでいました。
私と知英さんは、奥の奥まで見事に結合していたのです。

ついに私は夫を裏切り、親友の夫と交わってしまったのです。
けれども、私の心には後ろめたさなどは微塵もありませんでした。
私の中にあるのは純粋な肉の歓びだけ、女としての充足感だけだったのです。

「いいよ、素敵だよ、瑛子さんっ・・・」
知英さんも、ひたすら精力的でした。診察台が、ギシギシと軋みを上げていました。
彼の肉体から漂う体臭とクレゾールの臭いが、より一層私の性感を燃え盛らせました。

「来てるわ、来てる!痛いくらいよ、痛いくらい気持ちいいっ・・・」
何だか、二十代の熱情が蘇った気分でした。
私の中にも、まだ性に対するバイタリティがこんなにも残っていたのです。

全身が、性器と化した思いでした。かって、夫に対してこれほどまでに狂おしく求めた
事が有ったでしょうか。私は夫に対して余りにも自分を取り繕っては居なかったでしょうか。

知英さんと交わりながら、どうして夫のことを思い出してしまったのか、
自分でも不可解でした。
そればかりでなく、是からはもっと夫に自分というものを曝け出してみよう、
大胆な女である自分をアピールして見ようとすら考えていた私なのです。

「あうっ、も、もうダメよ、私っ!」やがて、最期の時がやって来ました。
美菜子さんに堂々と告白できるような、鮮烈なアクメでした。

知英さんの精液をスポンジの様に吸い取って、肉体が生き返りました。
細胞の一つ一つが瑞々しく潤い、まさしく私は生まれ変わったのでした。
END
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