夫婦交換への第一歩。其のニ
〜私達夫婦の場合〜

「それが、あのピアノの話だったのね」
「ピアノは、工場から出荷されるときは完成品ではないという話だね。
 ピアノは弾かないと完成しない。使い込むことによって完成する。
 自分が弾き込んでいき同時に気に入らないところは調律し、
 自分の気に入るように直してくれる人を、夫婦交換に求めたのだよ。
 由美子の肉体と鍵盤に、他の男の指が奏でる曲は、新しい狂想曲で、
 今迄と違った音色で由美子が悶え、絶唱するのだよ」
「嫌な事はどうしてもイヤ。私は処女の身体であなたと結婚したのよ。
 生涯あなた一人しか知らない女の最高のロマンを捨てろとおっしゃるの。
 いやょイャ、あなた以外の男に抱かれるなんて」
つんと鼻の先に涙が湧いて来そうな声であった。私は真剣であった。

「生きる事は苦しく、悲しく、辛いことかも知れない。
 夢と希望を捨てさせる夫が憎いだろう。しかし、冒険かも知れないが、
 どうしても実行したい。わがままを許しては呉れまいか」

この言葉で由美子が昨夜、自問自答してした“夫は正気なのか”と錯乱の中で
思った考えは簡単に切り捨てられたと悟ったと言う。
それでもなお、心の決心を先に伸ばそうとして、無理と知りながら問いかけたと言う。
「あなたは待つと言うことが好きだとも言いましたね。もう待てないの」

私は同情を求めるように、
「待ったよ、半年も。これ以上待てと言うのは無理だ。
 酒と同じで、良い酒を生み出すためには醗酵の期間が大事なように、
 六ヶ月間も由美子の心が熟して行くのを待っていたのだよ。
 待つと言う事は明日を信じる事であり、明日こそ由美子の気持が熟し、
 きっと私の望みを叶えて呉れると信じたから、今日迄待ったのだよ」

コックンとうなずき、寂しく答えた。
「一夫一婦と言うような、古い堅苦しい道徳なんか踏みにじっても良いのね。
 夫婦交換が私達夫婦にとって、マイナスでなくプラスに成るのなら・・・」

ひと呼吸おいて、
「いつまでも愛し続けて下さるのね。由美子は、由美子の心は、
 今は真っ二つ、半分はあなたのものですもの。でも、残る半分は・・・」
私のもの、あなたの自由にはならないと言って、また振り出しに戻るのかと
失望の色が私の顔に出た。しかし由美子は続けた。
「残る半分もあなたのものなのね」
「・・・・」
「どうせ身体も心もあなたのものですもの。でも恐いの。一度だけにして、
 一度だけならあなたが望むことだから仕方がないのよね」
忘我の境地である。突然の承諾に、私は唖然とした。

由美子は唇を噛み締めて、異様な決意に耐え忍んでいる。
夫が求めたことに妻が従う。夫の為には地獄とやらまで連れ添っていこうと、
そんな心の苦しみを理解して欲しいのか、
「今、抱いて、気持が変らないように、あなたに抱かれて決心を固めたいの。
 この決意を心に定着させるために、由美子、裸になる。あなたも裸に成って」

陽光が差し込む日中のリビングルームで、ブラウスを取り、スカートを脱ぎ始めた。
その脱衣姿に私は興奮し、気持が高まり、充血して大きくなってくる。絹の光沢が
セクシーである。スリップの白が部屋中の影をすべて吸い取ってしまったように、
光りの中にスリップに包まれた官能ボディが、パッと白く浮き上がった。

「恥ずかしいから早く抱いて」
「それは裸じゃない。下着姿じゃないか。生まれたままの姿になりなさい」
と私はランニングを脱ぎながら言った。
恨めしそうに由美子は再び後ろを向き、スリップとブラジャーを取り、
パンティ一枚になった。たわわなふくらみが由美子の二の腕で隠されている。
熟れたふたつのふくらみが、お互いを押し合い魅力の谷間を更に深くさせている。

「これでいいでしょう」
パンティも上品な純白だ。
「清潔な可愛いパンティだね。その中のものはもっと可愛いと思うよ。
 私も裸になるからそれも取って素っ裸になりなさい」
ブリーフ姿の私が言った。いきり立ったペニスがフリーフを突き破らんばかりに、
大きなテントを張っている。毟り取るようにそれを脱ぎ捨てると、
それまで抑圧されていたペニスが弾き出され上下に大きくはばたいた。

消極的な姿勢で足からパンティを抜き取り生まれたままの姿になった由美子は、
恥ずかしいのか、乳房と股間を手で覆い腰を引き気味にして膝を重ねている。
「それでは肝心な所が何も見えないよ。
 両手を伸ばして近くへ来て良く見せなさい。愛している夫が見るのだから」
「いくらあなたでも、恥ずかしいですわ」
股間を覆っていた手を顔に持っていき、イヤイヤしながら腰をモジモジさせる。

私は、永年連れ添った由美子の裸体と性器を、これほど明るい所で、
これほどあからさまに、これほどつぶさに見るのは初めてだった。

由美子はそこを見せることを嫌がったからだ。明かりを落とし掛け布団を掛けてから
でなければ抱かれる事を拒んだ。それは由美子の育ちの良さからくるたしなみと、
恥じらいによるものと思い、物足りないながらも好ましいものと思っていた。

由美子の実家は、世間でも“有情の家”と言われるほど人情深い家庭であり、
その環境の中で育った。
父は商工会議所の事務長を勤め、勤勉、実直、親切の評判高く、
母は、裏千家の師範であり、玲瓏玉のごとき人格の持主であった。

この父と母の長女が、私の生涯の伴侶として神が与えて呉れた女性である。
両親にとって始めての子供であり、祖父母にとっても初孫で、
文字通り(蝶よ花よ)で育てられた。結婚する時も抽象的だが、
「美しい家庭をつくりますわ」と言ってくれた。

その由美子が女らしく身をくねらせ、両手で顔を覆い、
真っ赤になって全てを見せて呉れている。私のペニスはいきり立ち、
下腹につきそうなほど起立してピクンピクンと脈動している。
羞恥に照った由美子の身体を引き寄せ唇を合わせる。優しさのこもった穏やかな
接吻が次第に烈しく性的なものに移るにつれ、由美子は立って居られなくなった。
私はそんな由美子を抱き上げたまま、寝室に運んだ。

蒲団の上で由美子は身体を開いた。レースのカーテン越しに陽が射す明るい寝室で、
由美子の胴体と手足はさまざまな文字の形をした。私が勝手に想像していたほどの、
あられもない反応を示す訳ではなかったが、子猫が甚振られて居るみたいに、
微かに洩らす喘ぎ声が煽情的だ。
そんな恥ずかしがる由美子の足を折り曲げて、足首を高々と持ち上げ、
膝裏を押さえつけて屈曲位にした。

茂みの下の亀裂も、薄茶色のアナルまでも完全に露出し、
呼吸する度に息づいている。私にとっては刺激的な眺めだが、
眺められる由美子にとっては、かなり屈辱的な屈曲位だった。

「あっ、そんなにしたら、いやあ〜、全部みえちゃいます、恥ずかしい」
両手で顔を覆いながら由美子は抗ったが、その抗いは弱々しかった。
明るい陽差しの中で私に眺められていると思うと、
官能に灼かれる身体に力が入らないらしい。
私は一杯に拡げた下肢のあいだに、どっかりと腰を下ろした。
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