七回忌法要の夜。其の一
〜蘇った苦い思い出〜

同性愛、近親相姦、SMが現代の性風俗の三大テーマに成っていると言うが、
中でも血族間の近親相姦は、此方のサイトでも良く取り上げられているように、
それにのめり込んでいる人は結構多いようだ。どうして是ほどまでにと問われても
返事に窮するが、血は水よりも濃いと言う事か?

私も懺悔の意味を込めて告白する事にした。いまこの手記を書こうとしている私は、
罪の意識に囚われて、悩まされ、常軌を逸してしまいそうなのである。禁断の実は
甘く酸っぱく、食べたら中毒になり、人間としての道を踏み外して仕舞いそうだ。
其の世界はまさに地獄の炎が燃え狂う、
被虐的な快楽が渦巻く世界と言えるかもしれない。

近親相姦・・・ドロドロした血の世界はまさにこの世の地獄であり、
人間としての最悪な行為の世界なのではないだろうか?
実の姉と私の愛欲行為は、獣の行為と全く等しいものだった。

しかし・・・いま思い起こしてみれば、耽美な快楽の極致だったようにも思える。
背徳と罪の意識に襲われながらも、被虐的な血の騒ぎに見舞われていた。
表現は不適切かもしれないが、姉と私の関係は
、私の今までの人生の中で最高のものだった。

一人の父の精子と、一人の母の卵子の結合から生まれた姉弟は当然だが、
血の?がりがあり、肉を分けた分身でもあるため、男女としての肌合いは
ピッタリであり、他人同士では全く得られないものである。
分身であるために燃え上がると自然な形で一つに成って、
ドロドロに溶けていき、最高の快楽が生まれてくる。

避妊さえしっかりしていれば、行為自体は物理的には粘膜と粘膜との接触であり、
キスと何ら変わらない行為である。
近親相姦は心も体も満たす最高の快楽ではないだろうか?
そんな歪んだ考えさえ沸いてくるのだが・・・。

三歳年上の姉は胃癌で、六年前に亡くなった。
昨日はその姉の七回忌の法要が行われたのだった。
享年六十六歳、まだ若い死だった。
亡くなる一年前、姉の佳代は胃痛を訴え、診断の結果、
胃癌だとの事で切除手術を行った。
そして半年後の再手術で、胃を全部取り除いてしまった。

佳代には告知しなかったが、彼女の夫と二人の息子には、
『胃から肺に転移していてこれ以上の手術は生命を縮める事に成ります。
 これからは延命治療に入ります・・・』
医師はそのように伝えていた。その事を私は佳代の夫から聞かされていた。

その数日後、私は姉の見舞いに病院へ言った。
時刻は午後八時を少し回った頃だった。
佳代は個室のベッドでボンヤリしていて、彼女の夫も息子も帰った後だった。
「陽ちゃん、あたし、知っているのよ」
姉は抗癌剤のために髪の毛が抜け落ち、それを隠す為に鬘(かつら)を使用していた。
血の気のない蒼白い顔で私を見上げた。目には涙が浮かんでいた。

「知ってるって、何を・・・?」
わたしは掛け布団の下から伸びてきた姉の手をそっと握った。
痩せて骨と皮だけの様に成った冷たい手にびっくりした。
「あたしの病気は、癌でしょう?」
「姉ちゃん・・・そんな?」
「胃癌が転移して、もう手術の施しようがないんでしょ!」
「良性ポリープで、後は回復を待つだけだと聞いてるよ。
 姉ちゃん、悪い方に考えないでくれよ」
(姉は気付いていたのだった)
私は姉の手を強く握り締め、じっと彼女を見つめていた。

「いいのよ、あたしは分かっているの・・・陽ちゃん、色々ありがとう・・・」
姉はか細い声で言うと、泣き始めた。
死を迎える為だけに生きて来た彼女の対して、
私は居た堪れない思いに突き上げられた。
「姉ちゃん!うそだ。姉ちゃんは癌なんかじゃないんだよ。
 早く元気になるんだ。家族のためにも・・・俺のためにも・・・」
私は覆い被さる様にして姉の佳代を抱き締めていた。

「そうだよね、陽ちゃんはあたしのタッタ一人の弟だものね。
 昔の事を思い出すわ、最近よく・・・二人だけの生活を・・・」
「姉ちゃん・・・」
佳代の言葉でわたしの胸の中にも苦い思い出が蘇ってきた。
近親相姦のあの忌まわしい思い出が・・・。
inserted by FC2 system