姉の千恵子と伯母の喜美代四十歳。其の二
◇別人のように◇

翌朝、二階から降りる時に姉に、
『姉ちゃん、今夜なっ』と耳打ちした。
「わかんない、ゆうべあんなことしたら月経に成りそうなんよ」

県立の高等女学校二年生にしては小作りな姉は答えた。
台所では味噌汁の良い匂いがしていた。

母は昨夜の事など何も無かった様な顔をしていた。
「ほらっ、急がないと遅れるよ」

私達は父親は東京に本社の有る会社に就職し、地元の工場で働いて居たのだが、
偉く成る為には、本社工場で数年実績を積まなければ成らないと言って、
単身赴任で東京の工場で働いていて帰って来るのは月に一度と盆暮れ位だった。

我が家には自家消費用の小さな畑は有ったが、非農家だったので、
母は織物会社の事務員として勤めていた関係で、朝は家中が忙しかった。

夕方は私が帰り、姉が帰って来てから、暫くしてから母が帰宅していた。
勉強しろなどと言われる事の無かった私は、友達と野球の真似事をしたり、
野山を駆け回って遊んでいた。
当時私は中学一年生だったが、身長はクラスでも一番でかく、
日焼けして逞しい身体は三年生にも負けない位だった。

風呂を沸かすのは私の仕事で、水を汲み薪に火をつけ、火吹き竹で吹き、
太い薪を放り込むと、少し余裕の時間が出来た。
その間に私は風呂に入るのである。初夏の六時は夕陽が沈まず明るかった。

風呂から出た処で、姉が帰って来たのに鉢合わせした。
『姉ちゃん、ほらっ』
私は裸のままで半立ちの陰茎の先を剥いて、赤い亀頭をむき出して見せた。
「ばかみたい。そんなん出しちゃって」
言いながらも姉はそれをそっと掌に包んだ。

途端に陰茎はむくむくと体積をまして、掌一杯に勃起した。
「うわっ。すごい。へぇぇ、こんなんなるんだあ。これがアソコに填まるんだあ」
『そうさ、だから今夜嵌めさせろよ』
「おっかないから嫌だ。でも可愛い」
『姉ちゃんのも見せろよ』
「だめっ。母ちゃんが帰って来るから、さるまたはきなよ」

姉が風呂に入った。私も中に入ろうと、ガラス戸を開けようとしたが、
中から鍵が掛かっていた。

ガチャンと庭から自転車のスタンドを掛ける音がして、
母が帰って来たのを知った私は慌てて居間に戻った。

急いで夕食の支度をするため、台所を行ったり来たりする母の体臭と、
タイトスカートをはちきれそうにしているヒップが目に眩しかった。

昨夜の情景が眼に浮んで、母の顔がまともに見られず、只勃起していた。

優しくて、子煩悩な母親が、父以外の男と上に成り下に成って、
性戯に夢中に成るのが理解出来なかった。

昨夜の母は別人のようで、私には信じられない思いであった。
母の下腹部を想像したり、姉の陰裂の指の感触などを思いでしていると、
姉が風呂から出て部屋に入って来た。

『今夜も母ちゃんやるんかな』
「わかんない。でも、母ちゃん何時もと違うみたい」

母が風呂に入っている間に、私と姉はコソコソと話し合っていた。
鼻唄まじりで後片付けをしている母を見て、姉はこっそりと言った。
「今夜もキット遣ると思うよ。
 だって母ちゃん寝間着の下にズロース穿いてないもの」

ラジオを聞いていた二人に母が言った。
「道夫明日早起きして仕掛け見に行くんだろう。早く寝た方が良いよ」
私達は二階の八畳部屋に寝ていた。布団を敷き蚊帳を吊った。

『誰なんだろうね。母ちゃんの相手は』
「機屋の偉い人じゃないの」

母は当時三十七歳の女盛りで、息子の私から見ても魅力的な女だった。
やや太り加減の身体はきびきびと良く動き、
表情も明るく豊かで、口煩くない友達の様な母だった。

でも、私の知らない女の姿を目撃してからは、
今までの母とは全く違う女として見て仕舞うのは、仕方の無い事だったろう。

その夜は期待しながらも、昼間遊びに夢中に成って飛び回っている、
まだ子供の私は、昼の疲れで寝込んでしまって、
翌朝、姉にこっぴどく叱られた。
「みっちゃんは寝込むと、ひっぱたいても起きないんだから」
『ああ、そうか。で昨夜はどうした』
「しらないよっ。いい事があったけど、教えて遣んない」
姉は不機嫌で取り付く暇も無かった。
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