行商先で出会った女。其の二
(2)

見透しの付かない戦争の中に、その年も慌ただしく暮れ、明けて二月の初め、
田舎の旧正月を兼ねて、前以て知らせる暇も無く、突然私は定子の許へ行きました。
不在中の仕事の手配や、引っ切り無しの来客の為うんと遅れて、
向かう、上越線長岡駅へ降り立ったのが、夜の十時半を過ぎていました。
漆の様な闇夜を四キロ余り歩いて、たどり着いた時はもう表門が固く閉ざされていました。

叩き起こすのも老人達に気の毒と思ったので、勝手知った裏木戸を開けて、定子らの
居室と成っている離れ屋敷へ近寄った時、部屋の中から定子の低い声に混じって、
男のだみ声がするのです。来客か、位な事で何の気もなく立ち止まった時、
「大分お前も近頃は上手に成ったなあ」
「皆あんたのお仕込みよ」
「どうだ、これでもオヤジが来ると、やっぱり食い慣れたマラの味がみたくなる?」

私は一切の推察がつくと、カッと眼の眩む様な憤激を感じた。
戸を蹴破って、と思ったが、ぐっと堪えて耳を澄ますと。
「やなこった、もうあんな人の小さいのなんか、こそばゆいばかりだわ。
 あんたのこの大きなのをぐっと押し込まれた時は、
 何遍しても魂がすうっと宙に飛んでしまう様やわ」
「そうでもねえだろう。この前オヤジが来た時、夜中に俺がこっそり覗いに行くと、
 ああん、あんたのこの雁の高いので抜き差しされると、
 ほんとうに善光寺参りじゃないが行きも戻りも有り難いわ、
 なんて泣き声でぬかして居たくせに」
「まあ!意地悪!あんただってこれで新川の和江さんも泣かしたんでしょう」
「ふふ・・・」
「やっぱりそうなのね。よし、もう、こうして、喰い千切ってやるから」
「いてえ、いてえ、てってって、あんまり粗末に扱うと、
 お前のオマンコへも入れて遣れなくなるが、それでもイイのかい」
「あら、そうだったわねぇ、あんまり癪に触ったから、其の事を忘れていたわ。
 それじゃ、一遍口で洗い清めて、又ぐっと入れて戴こうかしら」

私は焔の様な瞋恚で足が宙に浮いたまま、細い光の洩れる節穴へ眼を寄せました。
瞬間、私は思わずあっと叫びを上げかけました。煌々とした電灯の下で、
脂ぎった白い裸体をうつ伏せにして四つん這いに成った定子、其の尻を抱え込んで、
オマンコを覗きながら指を突っ込んでこね回し、腕首程もある凄いチンポを赤黒く
勃起させた四十三、四の男の淫猥な姿が、硝子障子を透かして横から丸見えなんです。

而も、直ぐ指を引き抜いた男が、大マラをぐっと押し下げてオマンコに宛がったかと
見る間に、腰を突き出してグイグイ突っ込むと、定子は夢中で尻を振り立てて、
息も絶え絶えに喜悦の呻き声を上げるのです。
私は全身の血が飛沫を上げて逆流するのを覚えました。
激しい昂奮で声が出ず、私は戸を蹴り叩きました。

一瞬、部屋の中はしんと静まり、電灯が消されました。私は上がり口へ走り寄ると、
夢中で襖を引き開けパッと中へ躍り込みました。何か入れ違いに黒い影が外へ
飛び出した気配でしたが、わななく手先で私がライターを点けた時、
布団の上に裸のまま膝を揃えた定子だけが座っていました。

いきなり腰の辺りを蹴飛ばし、転んで起きる所をメッタヤタラに殴り飛ばし蹴り倒しました。
私は喉が枯れてひき付き、声が出なかったが、手も足も痛くなると、やっと昂ぶった
気持ちも静まったので、手探りで電灯のスイッチをひねりました。

どたりと四肢を投げ出したまま、呻きを上げて大きく腹を波打たす定子の淫らな裸体を、
じっと見下して居る内に、何とした事か怒りと共に物凄い性感が噴き上げる様に
湧いて来たのです。多分先刻覗き見た時の淫猥な情景が嫉妬を呼び起こし、
更にその嫉妬の情が可虐的な肉欲に転化したのでしょう。

もう私は無我夢中でした。外套から褌まで、もどかしげに脱ぎ捨てると、
酷寒の夜気にも拘わらず全身がカッと火照って、腋の下に汗が滲んでいるのです。

素っ裸になると、定子に躍り掛かって浴びせ倒し、股座を裂ける程押し開いて、
既にヌルヌルに濡れそぼっているオマンコへ伸ばしたままで四本の指を、
ぐっと突っ込んでメチャクチャに掻き回したのです。
其れこそかなり延びた爪で、文字通り引っ掻いたのですが、
定子はこの烈しい刺激にも痛がるどころか、直ぐに鼻息を荒げて腰をくねらせ
喜悦の呻きを洩らす始末でした。

私は堪らなく成って、勃ぇ切ったチンポをするりと入れると、
「俺のが小さくてこそばゆいのだろうから、こうしてやる」
其の隙間から更に指を二本押し入れ、掻き回し、くじる間に、
私の方が耐え切れず気を遣ってしまったんです。

定子も、
「あア、私にも遣らせて。今日はとてもいいわ、
 あっ、指を抜かずに其の侭でもっと触って、もっときつくかき回して!」
と言うと、遮二無二私の頸部を抱え込んで腰を高々と持ち上げて、
ドクドクと気を遣ったのです。射精によって充血が退き、頭が少々冷静になると、
失敗したな、と思いました。

みすみす姦通の現場を押さえて置きながら、情欲に負けてしまっては、
もう姦通を黙認したことになる。何故もっと厳然たる態度が取れなかったのか。
私はだらしなくなくも劣情の虜となった自分自身に、烈しい自己嫌悪を感じると共に、
ええい、もうこうなれば一遍も五編も変わるものか、とヤケクソな気分になって、
又定子の身体を抱いてしまったのです。

憎悪と苛立たしさで我慢がならなくなった私は、そこに転がっていた子供の玩具、
木製の亜鈴を掴むと、チンポを引き抜いた後へ、潤いも与えず、
グリグリと押し込んだのです。
「あっ、痛い!無茶なことをせずに堪忍して頂戴。痛いわ、裂けそうだわ」

直径五センチ以上もある亜鈴を、陰唇を圧しひしゃげ、秘肉を擦り掻きながら押し込む
可虐的な快感で、私はとてつもない気分に浸るのでした。
だが、その亜鈴も、一旦泣き叫ぶ定子の苦痛を押切って膣内にスッポリ嵌め込み、
粘液にまみれてズルズル、ヌルヌルと、滑らかに抜き差し出来る様になると、
弛緩した定子のオマンコには、その疼く様な摩擦感すら却ってその貪欲な淫情を
そそり立てるのか、間もなくうっとりと眼を閉じてヨガリだす有様で、私は熟れ切った
三十女の、その旺盛な性欲に圧倒されてしまったのでした。

手も腹も、股座も、ベトベトに淫液で濡れまみれ、じっとり汗と脂を滲ませながら、
私はそれから二度、定子は四度か五度気を遣ったでしょう。
精根尽き果て、頭が空洞になった様な虚脱感で、墳怒も嫉妬も朦朧となり、
昏々と泥の様な眠りに落ちてしまったのでした。
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